インサイトの継続的発見

好奇心とインサイトが交差する、企業との関わり方

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はじめに – 「継続的発見」とは? 

インサイトの専門家は通常、過去の記録を調べたり、顧客のユーザーグループに質問を投げかけたりして、未来を予測することを任務としている。発見とリサーチのためのアジャイルモデルが急速に導入されて需要を集めている中、継続的発見は、リサーチャーの支援策として自然にフィットするモデルだ。継続的発見とは、顧客との調査活動を頻繁に行うことで望ましい結果を求めることであり、顧客の収集と維持、顧客コミュニティ構築のためのモデルである。そのコミュニティを活用することで、継続的なリサーチが可能となる。

現在では、製品・サービスを問わず、顧客を理解して素晴らしい体験を提供することが、これまで以上に求められている。このような継続的発見プロセスを擁する企業は、コミュニティがすでに確立されているため、すぐに行動を起こして顧客の関心事を見つけ、必要なフィードバックを即座に得ることができるという大きなメリットを持っている。重要なのは、デジタル体験を最適化し、組織内で分野横断的なリサーチプロセスを持つこと。これにより企業は、自社の製品やサービスに対する顧客の長期的な関係性と信頼性を、確実に把握できるようになるのだ。

Table of Contents

継続的発見のフロー

継続的発見の流れは5つのステップに分けることができる。どれもプロセスにおける重要な手順だが、確実にビジネスへと多大な影響を与えるのはステップ3~5だ。これらは継続的に調査を行い、インサイトを収集するステップである。最終的なフィードバックの実施により、インサイトがビジネスに与えるポジティブな影響を活用し、軌道修正することが可能となる。

ステップ1 – 主要なユーザーグループの選択

コミュニティに存在すべき主要なユーザーグループを特定する。これは、特定の顧客グループ、製品の使用状況、場所などに基づいて行うことができる。主要なユーザーグループは、いくつものカテゴリーにおいて決定できるが、すべて貴社の製品やサービスに関連する共通点を持つグループである。

ステップ2 – コミュニティへの直接リクルート

主要なユーザーグループが特定できたら、次にその顧客をコミュニティへリクルートする。これはコミュニティへの参加前に、適切な顧客かを判断するリクルート調査を通じて行うことができる。コミュニティメンバーのソースとしては、CRM、オンラインサンプル、ソーシャルメディア、ウェブサイトなどが挙げられる。

ステップ3 – 継続的な調査・定性調査の実施/新たな問いの創出

このステップでは、コミュニティのために立てた調査計画を実行する。後述する定性・定量の両手法を用いて、リサーチャーとステークホルダー双方の好奇心を煽る。リサーチを行うための下地がすでにできているため、機動的に活用できる。

ステップ4 – 継続的な“パルスインサイト”の導出

継続的発見のプロセスでは、リサーチが進むにつれ、リサーチャーは継続的にインサイトを導き出すことができる。また、フォーラムやアクティビティを積極的に傾聴することで、リサーチャーが思いもよらなかったような質問から気づきが得られることもある。さらに、コミュニティと行う計画的なリサーチからも知見が得られるはずだ。

ステップ5 – 主要ステークホルダーとの継続的なインサイト共有

このステップでは、リサーチャーが主要ステークホルダーや経営陣と発見を共有する。このプロセスの真価が発揮されるのは、インサイトがビジネスに真の影響を与えることを証明するところだ。このステップでは真のROIも明らかになるため、特に分野横断的なリサーチを重視する企業では、社内で継続的に売り込むことが容易になる。

継続的発見のメリット

発見とリサーチのためのアジャイルモデル

アジャイル方式においては、質問からエビデンスへと素早く移行する必要がある。コミュニティは、システムの選択、参加者のリクルート、方法の確立、インセンティブの組織化などの手順を省略してくれる。またコミュニティにより、「ビジネスのスピード」で結果を出すことが求められるフィードバックの迅速化が実現する。

高頻度調査・縦断追跡

コミュニティを大いに利用することで、ナレッジの体系が形成され(縦断的側面)、より多くのビジネス上の意思決定がエビデンスベースの意思決定を活用するため、さらなるインサイトの価値が生み出される。

マルチチャネルデータ収集

人々はさまざまなチャネルに反応する。携帯電話とパソコン、メッセージとメール、キーボードと音声による回答など、多様なチャネルに対応することで、より迅速かつ代表性の高い回答を得ることができる。

ブランドのトッププロモーターとの共創

賢者は、組織の内部よりも外部に多いものだ。賢いブランドは、クラウドソーシングなどのアプローチを通して、顧客の創造力を活用し、ブランドの未来を共に作り出している。

アイデア創発のためのアドバイザリーパネル

顧客は、自分たちが関わるブランドを改善するための時間とアイデアを惜しまない。これを実現する重要な方法の1つが、アドバイザリーグループやコンサルティンググループを作り、コミュニティが重要な発見と新しい考え方の源を提供することである。

アンケートからコミュニティまでをシームレスに統合

コミュニティは、貴社のブランドの成功を手助けしたい人たちの拠点だ。調査プラットフォームは、組織内のあらゆる人がコミュニティとその創造性にアクセスすることを可能にするツールである。

分野横断的なリサーチ – 定性的および定量的

1つの手法ですべての疑問を解決することはできない。複数を組み合わせることも視野に入れ、アプローチの選択肢を持つことが重要だ。例えばあるコミュニティにおいて、調査によってさらなる疑問が生じた場合は、主要なサブグループにコンタクトを取ることで、問題をさらに議論できる。

カスタマーライフサイクル全体の包含

従来のアドホック調査の場合、得られるのは、購入前、購入時、使用時などのスナップショット的な一枚の写真である。コミュニティがあれば、人々を縦断的に追跡し、新製品の見込みから購入、消費に至るまで、ライフサイクル全体を360度把握することができるのだ。

驚異的なスケールとスピード

コミュニティは、ほぼ無限にスケールアップすることができる。ビジネスのさまざまな部分で同時にインサイトを得ることができ、会員数はさらに幅広いサブグループにリーチできるくらい増やすことが可能だ。スケールアップとは、自身のプロジェクトが実行される前に他のプロジェクトが完了するような待ち行列を作らないこと。また、コミュニティのアジャイル性(例えば非常に短いアンケート)は、自分の質問と他者の質問を組み合わせる必要がないことを意味する。

エビデンスに基づく意思決定の増加

規模の拡大、アジャイルツールの作成、コストの削減により、エビデンスベースの意思決定の利用が増加している。顧客やユーザーとの対話がこれほど容易で強力なものである以上、「直感を信じる」「これまで通りにやる」という言い訳は通用しない。

プロジェクトごとのコスト削減

システムが存在し、余分なリクルートコストがかからず、外部機関を使わずに済むため、1案件あたりのコスト(経済学では「限界費用」と呼ぶ)が抑えられる。コミュニティを利用すればするほど、1件あたりのコストは低くなる。

インサイトのための継続的発見

充実した継続的発見とコミュニティのプラットフォームは、以下のようなリサーチを行う能力を備えている。このような顧客の大きな利点は、身近にいるために迅速なリサーチが容易で効率的であることだ。すでに戦略的かつ献身的な独自のリサーチ法を持っている組織にとっては、コミュニティは紛れもなく別物である。しかしコミュニティには、リサーチプロセスを強化・充実させてインサイトを増やし、今日の組織で必要とされている継続的発見を実現する役割がある。プロセスに役立つリサーチの種類を紹介しよう。

市場調査

1.市場動向 

市場ダイナミクスを監視し、負の衝撃から身を守ることで、常に曲線の上に立つことを可能にする。

2.市場細分化

さまざまな地域や人口動態における行動を監視し、価値に基づいたポジショニングを決定する。

カスタマーインテリジェンス

3.選択型リサーチ 

コンジョイント分析、Max-diff分析、カード分類などを用い、市場の状況をシミュレーションすることで、嗜好を追跡・監視する。

4.購買行動 

購入意思、製品・サービスの知覚価値を理解し、最適な価格モデルを特定する。

5.価格感応度 

ガボール・グレンジャーやヴァン・ウェステンドープなどの手法を用いて最適な価格設定を決定し、市場が貴社の製品やサービスにいくら支払うかを理解する。

6.ユーザーの行動と傾向 

価格感応度やトレードオフなど、さまざまな側面から購買行動を把握し、最適な価格モデルを割り出す。

ベンチマーキング

7.競合他社のベンチマーキング 

最大の競合他社とのギャップを明確にし、最大の差別化要因を押さえる。

8.製品・サービスに関する調査 

顧客や消費者が何を求めているかに耳を傾け、行動することで、競合他社に差をつけ、チャーン(解約)を減らすことができる。

テスト

9.広告テスト

ブランドのメッセージが消費者にどう響き、リファラビリティに影響を与えるのかをモニタリングする。 

10.A/Bテスト 

複数のベクトルで全項目をテストし、より大きな母集団を代表する、最も情報に基づいた意思決定を行う。

エクスペリエンス

11.CX – カスタマー・エクスペリエンス

顧客のブランドやサービスに対する体験を測定し、問題や機会を警告する継続的なプログラム。 

12.UX – ユーザーエクスペリエンス

新たなアイデアから既存製品の最適化まで、ユーザーから学び、ユーザーのためになるものを共創する。

継続的発見を可能にするプラットフォームの要素

これらの主要なリサーチ機能とは別に、継続的発見とコミュニティのプラットフォームがコミュニティを発展させるために必要とする重大な要素がある。継続的発見のためのプラットフォームは、顧客コミュニティの構築、リアルタイムの顧客インサイト収集、顧客体験の向上などを可能にするものである。定性・定量両面の機能を提供し、より良い情報に基づいたビジネス上の意思決定のための、実用的なインサイトを提供する。プラットフォームを構成する要素を紹介しよう。

メンバーポータル

メンバーポータルは独立したウェブサイトであり、メンバーはサインアップ、ログイン、アンケートの実施、トピック、ディスカッション、アイデアボードなどの定性活動に参加できる。また、メンバーのアカウント管理、プロフィール情報の更新も可能。QuestionProは、アラビア語と英語を主要言語とする100%多言語メンバーポータル設定をサポートしている。

トピック

メンバー同士が交流し、エンゲージメントを高めると同時に、インサイトを収集できるよう設計されている。メンバーが投稿したトピックや質問に対し、他のメンバーがコメントや賛同などの反応を示すことができる。トピックを分類したり、投稿時にタグ付けしたりすることで、類似したトピックを容易に見つけられる。また、この機能はオンライン掲示板のような使い方も可能だ。

ディスカッション

オンラインフォーカスグループのようなライブディスカッション。ユーザーが回答を入力する司会者がいるチャットベースディスカッションと、ビデオベースのオンラインフォーカスグループ/ディスカッションの2タイプが存在する。メンバーの中から特定のグループを招待し、ディスカッションに参加させる。受信した回答にはタグを付け、フィルタリングや分析を容易にできる。モデレータービューでは、ホワイトボードにメディアをプッシュしたり、関連する刺激を共有するなど、特別な管理コントロールと権限が与えられる。

アイデアボード

これは純粋にクラウドソーシングのために作られたもので、メンバーがアイデアを投稿し、他のメンバーがそのアイデアを評価でき、アイデアの状況をメンバーにフィードバックすることが可能。さらにソーシャル機能を利用して、アイデアの写真や動画をアップロードすることもできる。

投票

インサイトを迅速に収集し、継続的発見を支援するために、投票を作成・展開できる。複数の投票を使用することで、迅速なインサイトマネジメントと、コミュニティからのより早いインサイトを得られる。また、カスタム通知により、さまざまなプロファイルの属性に基づいて投票をトリガーすることができる。

ドキュメント共有

継続的発見プロセスの一環として、プラットフォームのドキュメントとリッチメディアの共有モジュールを使用できることは、強力な情報リポジトリを構築する上で非常に重要だ。コミュニティメンバーとドキュメントを共有することで、コミュニティとのエンゲージメントを高め、全体的な幸福指数を向上させることができる。また、メンバーが資料をアップロードすることで、重要な資料をメンバーからシームレスに収集できる。

カスタマーリワードとゲーミフィケーション

継続的発見のためのプラットフォームには、ゲーミフィケーションと報酬が組み込まれている必要がある。メンバーは、さまざまなタスクやアクティビティに応じてポイントを獲得でき、このポイントは内蔵のリワードモジュールで利用可能である。ポイントだけでなく、バッジもメンバーへのインセンティブとして活用でき、報酬を提供することで、コミュニティメンバーにインセンティブを与える。サインアップ、アンケート回答、ディスカッションなど、さまざまなアクションに対してカスタムリミットを設定できる。フィルターを使って容易に報酬を設定し、メンバーが報酬を効率的に利用できるように柔軟性を持たせることで、シームレスな体験を実現する。Tango、iTunes、スターバックス、Visaなど、さまざまなギフトカードの在庫を管理し、コミュニティのメンバーに配布できる。現金報酬の場合は、ユーザーのPayPalアカウントに直接支払いを行う。

コミュニティアプリ

モバイルアプリは、オンラインコミュニティの延長線上にあり、メンバーは同じ認証情報を使ってログインできる。アプリでは、メンバーはさまざまなモジュールを利用でき、アンケートや投票に答えたり、トピックやディスカッションに参加したり、プロフィール情報を更新したり、報酬を使用したりすることが可能。プッシュ通知を利用して、新しいアンケートやニュース、ディスカッションの投稿をリアルタイムでメンバーに知らせることができる。また、ジオロケーションアンケートにより、特定の場所にいるメンバーからフィードバックを得ることも可能だ。モバイルアプリでは、インサイトやリッチメディアを、コミュニティとリアルタイムで共有することができ、より大きなエンゲージメントを得ることができる。

定量的・定性的

ブランドは従来、定性調査を、リサーチにおける仮説の創出または証明・反証のいずれかのベクトルとして利用してきた。しかし、定性調査と定量分析を組み合わせて行うことで、リサーチャーやブランドなどのステークホルダーは、より重要なデータをコントロールし、リサーチインサイトを成熟させることができる。

優れた継続的発見プラットフォームは、ユーザーがメンバーグループから定性的・定量的情報を織り交ぜて収集する能力を備えている。アンケートや投票には、短納期の調査だけでなく、選択ベース・コンジョイント調査や価格分析調査などのために、ヴァン・ウェステンドープ法、ガボール・グレンジャー法、Max-Diff法、カード分類などの高度な調査モデリングや高度な調査技術や質問を含む、より長く複雑な調査も収集できる機能が備わっている。エンタープライズグレードの調査プラットフォームと統合し、継続的発見プラットフォームから簡単にアクセス可能にしたことで、双方向に情報の流れを作り出すことができた。プロファイルクロスタブなどの高度なテクニックを使い、適切なターゲットを見つけ、最適なメンバーに研究を展開できる。

また、アイデアボード、トピック、ディスカッションなど、上に挙げたような定性的な手法も利用できる。このツールは、ブランドやリサーチャーがプラットフォーム上でオンラインフォーカスグループを用いた継続的発見に関する研究を行えるよう、独自に設定されたものである。NLPでは、自動文字起こしなどの機能により、定性的・定量的なインサイトをまとめ、各インタラクションからより多くを学び取れるようになった。オフラインでの定性調査やフォーカスグループの実施には、パンデミック、スケジュールの問題、パネリストの確保、地理的な多様性、コストなど、多くの外的要因が影響する可能性がある。ビデオディスカッションやオンラインフォーカスグループなら、コミュニティ管理者は定性調査をより効果的に管理できるのだ。

スマートフィルタを使用して最も関連性の高いコミュニティメンバーを登録し、ビデオディスカッションに招待する。コミュニティの管理者およびリサーチャーとして、パネリストとのライブディスカッションを計画・スケジューリングし、効率的に実施することで、オフラインのフォーカスグループモデルと同等の成果を、オンラインコミュニティによって快適に再現できる。

それに加え、チャットの自動文字起こし機能を利用することで、より分かりやすい分析が可能になる。チャットをマークアウトして必要な情報を把握し、どこにいても回答者の行動を快適にモニタリングできる。これは画期的なことであり、定性調査をさらにスマートかつ効率的に行う方法だ。

まとめ

継続的発見プロセスを導入している組織は、コミュニティを立ち上げ運営することで利益を上げている。この記事を読んだあなたなら、この事実を容易に理解できるはずだ。インサイトチームは、顧客が何を考えているかを知り、必要なフィードバックを即座に得て、迅速に行動を起こすことができる。成功している企業では、デジタル体験が最適化され、組織内で分野横断的なリサーチプロセスが確立され、適切に運用されている。貴社がまだ5ステップのプロセスを開始していないのであれば、問題は「やるかどうか」ではなく「いつやるか」ということだ。早く始めるに越したことはない。

Authors

  • Ray Poynter

    Ray has spent the last 40 years at the intersection of research, innovation, and business, having been involved in the development of CAPI, online systems, online surveys, and social media research.

  • Dan Fleetwood

    Dan Fleetwood is President of Research and Insights at QuestionPro, one of the industry's leading providers of web-based research technologies. He has 15+ years of market research experience and is passionate about the role that software plays in helping businesses.