リサーチリポジトリとナレッジグラフ

持続可能なリサーチ組織構築のための実践的ガイド

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概要

世の企業はここ数年で、プロダクト、コンシューマー、UXに限らず、リサーチ自体が戦略的な資産になると捉えるようになった。

業績好調な企業は、リサーチが競争優位性や差別化要因を生むことを認識している。そのため多くの企業が、リサーチを軸にした社内機能、能力、部門を大規模に構築している。

社内のリサーチチームは、大企業のさまざまな部門に対するサービスプロバイダーとして機能する。大抵のリサーチチームには、多様なビジネスユニットからの質問が絶え間なく寄せられる。さらに重要なのは、特定の機能またはビジネスエリアに関するリサーチ結果があるかを、絶えず尋ねられることだ。

私たちは、インサイトへのアクセスを民主化するという最終目標に向け、インデックス化・検索・再利用が可能なナレッジベースを作成する、ビジネスに焦点を当てたタクソノミー(分類法)を持つインサイトリポジトリをリサーチチームが考案することを提言する。

インサイトリポジトリの主な利点は、先人のリサーチやインサイトを基に確立できることであり、一から作り直す必要がない。多くの企業が、顧客情報を一元管理するCRMに投資している。技術/ソフトウェアについても同様で、ソースコードは追跡可能で構造化されたリポジトリに保存され、事実の究極的なソースとして機能する。このフォーマットとシステムアーキテクチャは、リサーチ機能やインフラに応用できる。私たちは、リサーチチームがCRMやエンジニアリングのプレイブックを参考に、ただ一つの事実のソースを自分たちのために作成することを提案する。

この記事は音声でも聴くことができます。

目次

インサイトリポジトリ

リポジトリとは何か?

“チーム全体による消費と再利用をサポートするために、リサーチデータ・メモ・記録・画像・動画・録音・ファインディングス・インサイト・レポート・メタデータなどを保存する、プラットフォーム・システム・ドライブ・データベース・コンテンツ共同作業ツール・ライブラリ・ナレッジベース・Wiki・ファイルキャビネットのこと。”

– 2020年リサーチリポジトリ・ワークショップ、ResearchOps Communityのプロジェクト

私たちはこの定義をさらに拡張し、リポジトリが持つ、アーカイブファイルとの3つの大きな違いを指摘したい。

・コンテンツがインデックス化され、検索性、アクセス性、閲覧性に優れている。

・データに時系列的な要素がある。

・チームが決定的に権威のあるソースとして受け入れている。 

つまり、インサイトリポジトリとは、リサーチ担当や関連ステークホルダーが、組織が過去と現在の両方で実施したリサーチにアクセスできる、事実の中心的なソースと定義できる。インサイトリポジトリには、企業の全リサーチデータを整理・探索・検索・発見するための統合プラットフォームがあるのだ。

インサイトリポジトリが持つべきデータの重要な要素とは?

インサイトリポジトリは、3つの基本的な段階のデータで構成される。

1.インサイト/テーマ/ストーリー

全体的には、インサイトリポジトリはタグ付けおよびインデックス化され、統一されたインサイトで構成されている。これは、定性・定量調査、ユーザー調査、カスタム調査、先進的な調査モデリング研究など、さまざまな調査タイプの過去および既存の研究から得られるものである。これらのインサイトはすべて、ビジネス・タクソノミーとメタタグを使用することで容易に検索できる。また、コスト支出、研究のROIなどもモニタリングし、時間やリソースの支出を把握することができる。

2.観察とまとまりのある情報

インサイトリポジトリの第二段階では、特定のチームや製品が行う研究、長期追跡調査からのインサイト、製品の強化、マーケティングメッセージ、特定のイニシアチブから発したキャンペーンなど、さらに細かいレベルでの情報を提供することを目的としている。この段階では、プレゼンテーションや成果物も保存され、サイロ化した研究の暗黙知を誰でも参照できるようになる。

3.リサーチのローデータ&エビデンス

リポジトリの最終的な構成要素は、顧客との電話、ベンダーリサーチデータ、アンケート、ビジネス・タクソノミー・タグスタディ、定性・定量データ、IDI、顧客行動データなどの実データである。これらはすべて必要な時に参照し活用することができる、フィルターなしのデータである。

インサイトリポジトリにおける5つの特徴

複数のリサーチ担当、ビジネスステークホルダー、そして何らかの形でインサイトリポジトリを導入している企業に話を聞いた結果、最も重要な5つのポイントが明らかになった。

これらの重要な特性は、広く導入・利用され、成功するリサーチリポジトリの基盤となるガイドブックとして機能するはずだ。

1.回収の容易性

インサイトリポジトリの本質的な特徴は、リサーチ担当だけでなく他のビジネスステークホルダーにもとてもアクセスしやすい必要があるということだ。チームメンバーは、さまざまなプラットフォームで何度もクエリーを書くことなく、より理解しやすく消費しやすい情報を素早く入手できる。これらの情報を1つのプラットフォームにまとめるのが重要だ。リサーチ担当は、進行中の研究をサポートするために過去の研究から情報を引き出したり、研究のやり直しを防いだりできる。またビジネスステークホルダーは、人口統計情報、プロジェクトコスト、長期的なリサーチ研究など、自身にとって重要な情報に基づきインサイトを引き出すことができる。

2.アプローチのしやすさ

ビジネスにおけるすべての関連ステークホルダーは、インサイトリポジトリを情報収集のために活用したいと思うはずだ。ツールの導入率が高くなるよう、あらゆるレベルのメンバーが容易にアプローチできるものでなければならない。また、複雑で煩雑なワークフローを避けつつ、楽に分析できる必要がある。ステークホルダーが好むのは、パワフルでありながら容易に表される軽量なデータにアクセスでき、複雑なレポートやチャートを見る必要がない状態だ。

3.追跡可能性

成功するインサイトリポジトリは、データにリンクしていない、美しいチャートや数字だけであってはならない。インサイトとデータを結びつけられるかどうかが重要であり、必要に応じて元のデータに紐づける方法を築くことが必須である。リポジトリはエビデンスに基づくものであるため、オリジナルデータやローデータに言及して信頼性を高めなければならない。インサイトリポジトリは、何年も前のデータであっても、検証の必要がある場合、あるいは当時の推論が現在でも通用するかを確かめる必要がある場合、全データにリンクバックすることが不可欠だ。また、データ追跡が容易なため、反復調査や長期的追跡調査の際にも、多変量データが今でも意味があることが確認できる。追跡可能なデータがあれば、リサーチ担当は新しい結論やインサイトを素早く導き出せるはずだ。

ここには、2つの重要な要素があると考えられる。

1.タイムスタンプ 

2.データソース&エビデンス

すべての要素にはタイムスタンプが必要である。インサイトとデータは急速に変化し、各アイテムには有効期限があるからだ。インサイトをローデータやエビデンスに結びつけることも同様である。これにより、ソースやローデータまで遡ってトレーサビリティとアカウンタビリティを確保し、インサイトに対する信頼性を高めることができる。

4.アクセス性

インサイトリポジトリの導入率が高くなり、変化をもたらすためには、すべてのステークホルダーがアクセスできる必要がある。リサーチチームの新人でも、初日から時間を無駄にすることなくアクセスし、過去の研究について情報に基づいた判断や推論を行うことができる。大きな成功のためには、ツールの導入が即座に、かつ恒常的に行われる必要がある。インサイトリポジトリは事実の唯一のソースたるべきであり、インサイトを発見するために、チームメンバーが多数のフォルダやレポート、ドキュメント、スプレッドシートを参照する必要があってはならない。

5.安全性

インサイトリポジトリは、複数のソースからのデータを格納し、組織にとって事実の唯一のソースとなるため、機密性の高い情報が格納される可能性が高くなる。インサイトリポジトリがグローバルな組織で広く利用されるためには、GDPRに準拠するなど、データウェアハウスやセキュリティに関する、連邦政府やその他の地方自治体のガイドラインに適合していなければならない。データの保持、暗号化、匿名化、削除に関するポリシーも必要となる。

インサイトリポジトリを持つ主なメリット

インサイトリポジトリは、リサーチ担当や組織の生活をより良く効率的にするための複数の可動要素で構成されている。その多大な効果やメリットの一部を紹介する。

・いつでもどこでも、オンデマンドでインサイトへのアクセスを誰でもできる。

・特定の人間や暗黙知への依存度を低減できる。

・リサーチ担当が既存のナレッジ・研究を再利用・構築できるようになる。

効率的で再利用可能なワークフロー

インサイトリポジトリを使用することで、新プロジェクトの取り込みプロセス、プロジェクト管理、ステータスアップデート、テンプレートなど、従来インサイトの専門家にとって面倒で非効率的だった事を統合できる。要求段階から、ユーザーインサイトリポジトリにタグ付け・モニタリングされるインサイトまでのデータの流れをワークフローとして設定することで、構造が明確に定義され、時間とリソースを大幅に節約できる。

自らの手で素早くインサイトにアクセス 

リサーチ研究終了後には、全プロジェクトデータ・重要なファインディングス・資料が検索可能で有意義なリポジトリが参照できる。リサーチ担当、インサイトチームおよびステークホルダーが、現在/過去のデータを1つのプラットフォームで検索し、インサイトへと迅速にアクセスできる、便利で分かりやすいリポジトリである。

ナレッジアクセスとグラフの充実

ゼロから始めるのではなく、すでに実施された過去のリサーチを基にすることで、ナレッジアクセスとグラフを充実させることができる。過去の研究におけるナレッジを得ることや、過去の発見と現在あるギャップとのトレンドラインを容易に構築できる。ナレッジが蓄積されるため、豊富な知恵を社内で絶えず発見し続けることができ、ROIを示すための積み上げ型原価計算なども簡単に行える。

透明性が向上、情報の損失なし

このナレッジハブのさらなる利点は、リサーチ依頼者から、それを実施しレポートを発行するチームに至るまで、リサーチデザインとプロセスに高い透明性がもたらされる点だ。過去に実施された研究内容や参加したチームメンバーも簡単に検索できるため、多様な条件から情報を引き出すことが可能である。

短納期での研究が可能

研究タイプ・調査票・使用ツール・調査対象者などの情報にアクセスすることで、リサーチ担当やその他の関連ステークホルダーが既に知っている多くの管理的側面を持つ研究を短時間で実施できる。これにより、過去のインテリジェンスを活用し、実用的なインサイトをより早く得られるよう、迅速な調査を展開することが可能となる。

データの民主化&ウェアハウスの統合

チームやビジネスユニットをまたぐデータは、暗黙知を軽減し、ビジネス・タクソノミーを統一した統合ウェアハウスに流れ込む。これにより、リサーチハブはあらゆるインサイトをワンストップで提供することができる。データの管理およびアクセス性をより重視することで、データの意味を理解するために複数の場所を調べたり、さまざまなステークホルダーに連絡を取ったりする必要がなくなり、多変量リサーチデータの管理も容易になる。

リアルタイム分析

インサイトリポジトリを使用することで、データや分析に瞬時かつリアルタイムでアクセスできる。それだけでなく、インテリジェントラベルや人工知能(AI)の力を借りれば、関連性の高い、興味深いプロジェクトの情報を浮上させることが可能だ。この機能により、リサーチ担当やビジネスステークホルダーがインサイトリポジトリを利用し、増幅・再利用可能な市場調査においてリアルタイム分析を活用することで、より一層利益が上がる。

インサイト/リサーチリポジトリのビジネスニーズとROI

インサイトリポジトリのビジネスニーズがある理由とは何か。このようなソリューションを急ぐ必要があった実際の原因を理解する仕組みが確立された。リサーチは大きく分けて、ブランドにとっての好機を引き出すことを目的とした「ジェネレーティブ・リサーチ」と、特定のユースケースやソリューションを検証する「エバリュエーティブ・リサーチ」の2つに分類される。

これらのインサイトのユースケースの中心では、ナレッジマネジメントとスケーラブルインサイトを基本的にやめてしまっている。従来は、過去データの掘り起こし、新メンバーの登用、過去リサーチの活用、個々の研究におけるナレッジの喪失、暗黙知などにおいて問題があった。インサイトのプロセスをスケーラブルにするためには、企業や組織はこれらの具体的な問題を乗り切る必要がある。

インサイトリポジトリが必要となった最も顕著な問題点は、以下の通りだ。

リサーチとデータが極端にサイロ化される

組織がリサーチを行う頻度や規模、複雑さはさまざまだ。組織内の多様なグループが独自にリサーチを行うこともあれば、専門のリサーチ担当に調査を依頼することもある。ほとんどの企業ではアウトソーシングとインソーシングのリサーチが混在しており、そのためリサーチの記録や分類のシステムも異なっている。

さらに、他の部門やビジネスユニット、地理的に異なるタイプのリサーチ間における変動要因も加わる。顧客研究、ユーザビリティリサーチ、オンラインフォーカスグループ、定量リサーチ、そして収集された大量の調査データについて考えてみてほしい。これらはすべて、小さなグループに入り込むことはあっても、決して民主化されることはない。リサーチデータは高度にサイロ化されており、特定の期間を過ぎると、誰もこのデータを理解できない。データを偶然見つけたとしても、データには暗黙知が多く含まれており、意味を把握するのは困難だ。

同じリサーチを複数回行うことになる

また、リサーチリポジトリの誕生が必要となった大きな要因として、同じリサーチが何度も行われていることが挙げられる。チームに新メンバーが参加する時には、多くの場合、以前完了した研究を繰り返し、かつて収集したインサイトを引き出す。これでは重複作業が増え、時間とコストの損失、インサイトのROIを低下させる要因になる。リサーチ担当が送ってきたインサイトに、ビジネスステークホルダーが警戒心を抱くことは珍しくない。時間が経つと、リサーチやデータが同じような心情を招くため、リサーチ担当やリサーチレポートの信頼性が失われてしまう。

リサーチレポートに注目されない

各研究の終了時にはリサーチレポートが作成されるが、残念ながら、その作成・保管・配布の方法についてはほとんど決まっていない。さらに、リサーチ担当のデータ解釈の複雑さ、ビジネス上の問題点との整合性のなさなどから、これらのレポートは埋もれてしまう。また、レポートはあちこちに保管され、時間が経つと古くなってしまうため、見つけるのが困難な場合が多々ある。さらにレポートの問題点として、ファインディングスや提言にデータドリブンな構造がないため、ステークホルダーの不信感を高めてしまうことが挙げられる。

恣意的なワークフロー

大規模な複合組織は、収集されたデータの複雑さを理由に、より大規模に実施されたリサーチや、純粋に関係するステークホルダーについての見識を持っていない。そのうえ、さまざまなステークホルダーがビジネス上の問題を異なる視点で捉え、同様の調査に対してさまざまなインサイトを求めることがある。プロジェクトの受け入れ形態は人によって異なり、リサーチ方法も多様だ。そのため、各ワークフローがかなり恣意的になり、ある時点以降の処理の意味づけが非常に複雑になってしまう。 

ナレッジの発見がない

各リサーチプロジェクトには、それぞれの理由が存在する。リサーチや研究調査は、ブランドやカスタマーチャーン(顧客解約件数)など特定のニーズに対して行われる。これらのビジネス・タクソノミーは通常、会話やメール、暗黙知によって把握される。従来は、ビジネス・タクソノミーとメタタグを設定し、そこからインサイトを引き出すためのリサーチ研究を行う方法が存在しなかった。新メンバーも、過去の研究結果やファインディングスを1つのリポジトリですべて把握できるわけではない。

既存の市場やツールは断片的である

インサイトリポジトリを必要とする最大の課題の一つは、既存の市場やツールが非常に断片的であることだ。さらに、さまざまなソリューション、ソフトウェア、現在の技術スタック、コミュニケーションや管理ツールなどが複雑に絡み合っており、複数のレベルの会話や多様なレベルの交流が混在している。研究依頼ツール、プロジェクト管理ツール、研究管理ソフトウェア、リサーチレポートなどがあるが、他にも社内コミュニケーションツール、さらにベンダーとのコミュニケーションやAPIなどがあり、ナレッジの流れや管理の複雑さが増している。 

リサーチにおけるROIの証明

これらのツールは断片的であるため、リサーチのサイクルが長く複雑化している。さらに、使用するアンケートやベンダー、回答者サンプル、使用するツールなど、リサーチの複雑さや偏りにつながる要因が存在する。このため、ほとんどの重要なリサーチ研究は、複雑さと不確実性を内包しながら、構想から実用的なインサイトの段階に至るまでに非常に長い時間を要している。その結果、意思決定を行う際に、リサーチプロセスと実際の最終的な要因を結びつけることが難しく、リサーチのROIを正当化することが困難になっている。

こうしたことから、リサーチとインサイトをよりシンプルかつ効率的に、迅速に行えるシステムの構築が必要になってきたのだ。


ビジネス・タクソノミー

ノード、メタデータ、タグ、アトリビュート – 情報整理に向けた新たなアプローチ 

私たちは、プロジェクトやインサイトを整理する上で、将来を見据えた柔軟な方策を持つことが重要だと考えている。ビジネスの成長と変化に応じ、柔軟に分類法を変更できることが肝要だ。つまり、固定のカテゴリーではなく「タグ」を使い、柔軟なインサイトのナレッジグラフを作るのである。

インサイトに関連するタグとアトリビュートは、ダイナミックかつ柔軟でなければならない。新たなタグやコンセプトがいつでも導入でき、古いタグはデータモデルに大きな影響を与えることなく破棄されるからである。

また私たちは、タグ/コンセプトは入れ子構造で階層化されている必要があると考えている。これにより、より自然なノードとツリーの分類モデルを実現し、実世界を正確に表現することができるようになった。

ワークフロー

ここでは、エンジニアリングとプロダクトのチームが、高速に変わる環境の中でどのように機能しているかを見てみよう。彼らは皆、ワークフローの管理にJira、YouTrackなどのチケットシステム/バグ/問題追跡システムを使用しており、アサインメント、オーナーシップ、ステータスはそこで管理されている。コードはソースコードリポジトリに書き込まれ、結果的にアップデートやビルドはチケットにリンクされる。ワークフローとリポジトリとアウトプット(ビルド)の間に統合の好循環が生まれているのだ。 

営業チームや会計チームは、顧客データを保存するためのCRMプラットフォームと、売上→デモ→請求書作成というワークフローを定義するための一連のツールを使用している。SalesforceはCRM/リポジトリのデータの上にさまざまなワークフローを実現し、App Marketplaceで圧倒的な地位を築いてきた。

既存のワークフローに統合することなく、また既存のワークフローがリポジトリに追加できるようにすることなく、リポジトリモデルを設計することは逆効果だと言えるだろう。小規模な営業チームやエンジニアリングチームが、最初はスプレッドシートから始め、最終的にSalesforceやJiraのような記録システムに移行するのと同様に、インサイト&リサーチチームもワークフローを定義する記録システムを持ち、ワークフローとリポジトリを深く相互にリンクさせる必要がある。つまりワークフローツールは、リポジトリの充実と発展を可能にするのである。

オペレーションと実行の課題

さまざまな企業でリサーチリポジトリを展開する中で、約10社に1対1で聞き取り調査を行い、その多くが直面するいくつかの課題が明らかになった。

リーダーシップの支持と調整

ほとんどのイニシアチブと同様に、リーダーシップは、このようなプロセス/システムを制定するための経済的利益とROIを確認する必要がある。彼らの根底的な賛同がなければ、こういったイニシアチブは理論上失敗する運命にある。私たちの多くのリサーチでは、リーダーはこうしたアイデアを試し、徐々に自分たちの文脈でROIを証明することに前向きであることが分かった。これにより、1つのチームまたはチームの一部でシステムを試験的に導入し、有効性を判断した上で決定を下すよう、リーダーシップを説得しやすいモデルができるのだ。

リサーチ担当の教育 

私たちはタグ付け、命名法、情報整理に関する基本的なガイドラインに従うよう、リサーチ担当を教育し、権限を与え、要求しなければならない。営業担当にはCRMにデータを整理して入れるよう説得すべきであるように、営業のトレーニングがあれば、リサーチ担当も、データを照合し、整理して構造的に報告するというプロセスを歩まねばならないことが予想される。魔法のように人間の行動変容を解決するツールやプラットフォームを期待しても、トレーニングや勤勉さがなければ逆効果となってしまう。

外部のリサーチベンダー 

外部ベンダーは、タクソノミーとガイドラインの遵守に関して興味深い課題を投げかけている。また、アクセスやリポジトリへの貢献が容易であるという点でも課題がある。ベンダーがシステムリポジトリにアクセスすることを許可するか、またはデータがデータ/ガバナンスプロセスを通過するようにするかを検討しなければならない。

リポジトリの断片化

複雑な環境下では、リポジトリも含め、データやプロセスの断片化がつきものだ。ベンダー、チーム、そしてチーム内でも、技術的な制約からサイロが生まれる。リサーチチームは、データやストーリーに対する支配力を手放したくはないだろう。

成熟度

多くの企業は、インサイトを管理するためにシンプルなツールやフォルダから着手する。リサーチ担当のデスクトップにある整理されたフォルダから、すべてのリサーチ担当がファイルやデータを提供するGoogleドライブやシェアポイントの共有フォルダまで、さまざまなものが存在する。

成熟度スケールとレベル

以下の表は、インサイトを管理・追跡するさまざまなモデルの長所・短所を説明したものである。

インサイトリポジトリの作成・管理方法のステップ

適切に管理されれば、組織レベルでのインサイトリポジトリの導入率は非常に高くなる。また、このユーザーインサイトリポジトリは、マクロレベル・ミクロレベルのリサーチ課題を解決し、実用的なインサイトを発掘・管理するための重要なファシリテーターとなる。しかし、これらすべてを可能にするには、現在のプロセスと、拡張性があり価値を提供する統一されたリサーチ&インサイトプラットフォームに至るまでに必要な事柄を、すべてのステークホルダーが極めて明確にする必要がある。プラットフォームを決定する前に、リサーチやコラボレーションに使用している既存のテクノロジースタック、ベンダーやベンダーのAPI、既存のナレッジマネジメントハブ、ワークフロー、その他の内部要因についても考えておくと、より効果的だ。

簡単な6つのステップでインサイトリポジトリを作成し、管理する方法を紹介しよう。

1.インサイトリポジトリの管理チームを任命する

組織内のリサーチ担当や広範なリサーチチームは、インサイトリポジトリを維持し、所有する必要がある。グループ内でも、社内や組織全体でツールの導入を推進するリーダーやリサーチリーダーを任命する。このようなチームとそのメンバーは、組織全体や社内外のさまざまなステークホルダーと行うリサーチを俯瞰しなければならない。またチームは、タクソノミーの管理、ワークフローの設定、インサイトハブからナレッジの導出を支援する役割も担う必要がある。チームは組織全体への導入促進に貢献し、このプラットフォームを組織全体の事実と情報の単一ソースとすることを目指す。プラットフォームの導入と成功には、複数のメンバーが貢献・寄与できるが、そのポテンシャルを完全に引き出せるビジネスリーダーが不可欠だ。

成功を測るシンプルな指標は、毎月リポジトリから情報を消費するユーザーやステークホルダーの数である。どのようなシステムでも、社内の説明責任のためにこの数を追跡し、報告できなければならない。

2.既存・過去のリサーチ内容を整理する

チームとツールが決まったら、既存・過去のリサーチを整理するために、タグのグループ化を行うビジネス・タクソノミーなどを定義することが肝要だ。プロジェクト、製品、場所、またはその他任意の基準など、好みの条件で振り分けを行う。適切な組織編成により、様々なソースからのリサーチやインサイトを統合し、堅牢で拡張性の高いナレッジグラフを即座に構築できる。さらに組織全体のビジネスステークホルダーとリサーチ担当は、研究の量・規模・方法・ツール・ROIについてインサイトを得ることが可能になる。

タクソノミーを前もって確立しておくことの利点は、インサイトやリサーチのチーム内でも、何が重要なのか、ビジネスに対する共通の見解をどのように持っているのかを詳細に把握できることだ。

3.裏付けとなるインサイトとエビデンスを追加

メモ、データ、観察、フィードバックを追加することで、インサイトリポジトリを非常に堅牢かつ強力なものにすることができる。関連する情報をまとめ、ブランドにとって最適な方法でタグ付けすることで、チーム全体が必要とする最も具体的で正確なインサイトを得られる。情報過多だと感じるかもしれないが、関連するすべてのインサイトやデータで正しくタグ付けされていれば、インサイトリポジトリの最も強力なバージョンを作成することが可能だ。ベストプラクティス、メモ、その他のサポート情報を追加することで、貴社のリサーチハブはどんどん大きくなり、実用的なインサイトを導き出すまでの時間も短縮されるだろう。

また、エビデンスを「ドリルダウン」する能力も重要である。エビデンスのスクリーンショットであっても、インサイトとエビデンスがリンクしていないよりはずっと有用だ。学術誌の「参考文献」のようなものだと考えれば良い。脚注や参考文献があることで、私たち全員の誠実さが保たれ、完成物を公に精査することが可能になる。

4.データの統合と分析を行う 

定性・定量双方のリサーチデータとその分析を1つのプラットフォームで管理できるツールを使えば、製品管理、リサーチプラットフォーム、コミュニケーションツールの3つを一元化して利用することができる。また、すべての関連データを1ヵ所に集めて管理し、必要に応じて後からアクセスすることも可能だ。 

APIを使用して、インサイトやレポートを生のファインディングスやエビデンスにリンクさせることを検討してほしい。大抵のベンダーは、システム同士が相互作用するためのオープンAPIを備えている。

5.クリティカルインサイト、ファインディングス、レポートの作成

リサーチハブでは、わかりやすいレポートやまとまりのある情報を作成することが不可欠である。複雑な研究を、重要なインサイトやファインディングスからなるスマートタグ付きのレポートに切り出すことは、リポジトリにとって最適な導入方法となるだろう。それだけでなく、これらのファインディングスは各レポートのスナップショットビューを提供し、その後、レポートを比較、結論づけ、積み上げ型原価計算が確認できるので、リサーチのROIを正当化することができる。各リサーチ研究の名称、依頼者、事業部、リサーチ方法、スケジュール、コストなどのスナップショットビューを作成することで、プラットフォームに関する最も具体的な情報を提供し、それによって導入率を高めるのだ。

6.タグ付けとインサイトの共有

最後に、適切なビジネス・タクソノミーとメタタグでリサーチ研究をタグ付けすることで、グループ化およびインデックス化ができ、検索可能なインサイトレポートを作成できる。複数のタグをグループ化したり追加したりしても、すぐに推論に役立つのであれば問題ない。タグ付けしてインサイトを共有することで、ステークホルダーがリサーチプロセスを把握できる。これは、導入と利用の促進にもつながる。グループ化されたインサイトは重複する可能性があるが、職務、リサーチ研究、ビジネスグループなど、関連するすべてのステークホルダーがインサイトにアクセスできるようにするためには差し支えない。

著者紹介

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  • Jamin Brazil

    Jamin Brazil is the Founder & CEO of HubUX. He was a founding member of Decipher that subsequently got sold to FocusVision as part of the rollup that got merged with Confirmit.

  • Vivek Bhaskaran

    Vivek Bhaskaran is the founding member and executive chairman of QuestionPro, one of the industry's leading providers of web-based research technologies.

  • Kristi Zuhlke

    Entrepreneur, idea generator and global consumer insights & strategy expert with strategic leadership experience at Procter and Gamble and 3 time company founder... on my way to number 4.